7,ボルヘス「夢の本」を読む
- 6月10日
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キケロの言葉「雄弁なき英知は国政に有益ではないが、英知なき雄弁のほうは大いに有害でありまったく役に立たない」(『弁論家について』岩波文庫)のご紹介があり、極真空手創始者・大山倍達の座右の銘「力なき正義は無力なり、正義なき力は暴力なり」にまで話が広がりました。ちなみに、これはパスカルの『パンセ』(298)にある「力なき正義は無力であり、正義なき力は圧制(暴力)である」を引用、借用したそうです。キング牧師の「愛なき力は暴力であり、力なき愛は無力である」や、カントの「概念なき直観は盲目であり、直観なき概念は空虚である」(『純粋理性批判』)にまで発展するもので、またまた皆さんのお話は、哲学の深い土壌へと広がっていきます。
今回は、アルゼンチンの詩人・小説家ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899-1986)の『夢の本』(堀内研二訳、河出文庫)がテキストです。イギリスのある随筆家の言葉「夢を見ている時、人間の精神は肉体を離れ、それは同時に劇場であり、俳優であり、さらに観客である」を冒頭に引用しながら、ボルヘスは巻頭言の序で「夢がすべての文学ジャンルの中で最も古くて複雑なジャンルをつくり上げているという、危険なほどまでに魅惑的な命題へと導かれる」と前置きし「種々雑多なものの寄せ集めである本書は、好奇心の旺盛な読者の気晴らしのために編纂されたもの」であり、「オリエントの予言的な夢に始まり、中世の寓意と風刺のこめられた夢、さらにはキャロルやフランツ・カフカの純然たる遊びにいたるまでの、このかくも古いジャンルの進展と文化とが考察されることになるだろう」と呼び掛けています。
キケロの「スキピオの夢」や荘子の「胡蝶の夢」も取り上げられています。ここでは、ルイス・キャロルの「王の夢」と、ボルヘス自身の夢「夢の虎」を紹介しましょう。
「王の夢」(『鏡の国のアリス』)
「今夢を見ていなさる。誰の夢だかわかるかね?」
「誰にもわからないわ」
「あんたの夢だよ。それで、もし夢を見終わったら、あんたはどうなると思う?」
「わからないわ」
「消えちまうのさ。あんたは夢の中の人間。だから、その王様が目を醒ましたら、あんたはろうそくのように消え失せてしまうのさ」
「夢の虎」
子供の頃私は虎に熱烈にあこがれていた。虎といっても…アマゾンの密林に棲む赤と白の斑の虎ではなく、縞模様のあるアジアの本物の虎で…私はよく動物園の檻の前にいつまでもぐずぐずと立ち止まっていたものであった。…少年時代も過ぎ去り、…いまだに虎が夢の中に現れてくる。…だが、…なるほど虎は出てくるが、剝製のとか弱弱しいものであったり、姿が妙に変形していたり、…すぐに消え失せてしまう者であったり、犬とか小鳥めいたものだったりするのだ。
エリザベス女王とビートルズの話も披露されました。女王は「She Loves You」や、「Twist and Shout」のような、1960年代初期のアップテンポな楽曲を好んで聴いていたそうです。
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