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6,キケロ「スキピオの夢」×モーツァルト

  • 6月2日
  • 読了時間: 3分

 皆さんには敬服以外の言葉がありません。「今日が一番若い。毎日そう思って生活しています」とのご発言は、道元の「即今・当処・自己(いま、ここで、自分が全力で生きる)」(『正法眼蔵』)を思わせます。室町時代の一庶民が「何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂え」と読んだ『閑吟集』(岩波文庫p.94)、美しい姫と会った夢を見た後、フランス政府からレジオン・ドヌール叙勲の知らせが届いたことが書かれている版画家・長谷川潔著『白昼に神を見る』(白水社、p.17)、吉田兼好の「死は前よりしも来たらず、かねてうしろに迫れり」(『徒然草』第155段)―どれもまた、哲学の土壌を思わせ、耕してどのような花が咲くのか、これまた皆さんとお話ししたくなりました。

 

 本日は、古代ローマの政治家・哲学者キケロ(BC106-BC43)の著作『国家』第六巻「スキピオの夢」を取り上げます。プラトンの『国家』を意識して書かれたと思われる対話編を締めくくるもので、共和制ローマの名将小スキピオ(BC185-BC129)が、夢の中で祖父の大スキピオ(BC236-BC183)と出会い、宇宙の構造や魂の不死、そして正しい政治と義務について教えを受ける内容になっています。8人の親友たちとともに邸宅に集まって理想的な国の在り方について議論していた小スキピオは、いままで誰にも話すことのなかった二十年前(BC149年)に見た夢の話を語り始めるのです。


 私は、祖父の案内で天界に昇り、下界の小さな地球を見下ろしていました。天界の運行によって奏でられる神秘的な天球の音楽が聴こえてきます。そして、人間の肉体は滅びても、魂は神から与えられた不滅のものである、との声が聞こえてくるのです。地上での一時的な名声にとらわれず、徳を積むことが何より大事であり、国家(公共の利益)のために尽くした者には、死後に天界(天の川)の特別な場所が用意されている、と。

「まことに、肉体の快楽に溺れ、その下僕(しもべ)のように振舞い、快楽に盲従する欲望に駆られて、神々も人間どもも従うべきである法(のり)を犯した者、こういう者どもの魂は、肉体(にく)から忍び出たあとも、やはり、もとの地球のぐるりを足掻き回って、ここの場所へは、責苦がうち続く長い時期を数かさねたあげく、ようやくのことで戻り着くのだ…」

 祖父の姿が消えて、私は眠りから醒めたのです。


 それから18世紀を経たオーストリアのザルツブルクで、若干15歳のモーツァルトが、「スキピオの夢」をオペラとして世に出すとは、想像を絶しますね。オペラの台本では「美徳(義務)と幸福(快楽)のどちらを選ぶか」という分かりやすい寓話に置き換わり、夢の中に、「恒常(美徳)の女」と「幸福(運命)の女神」が現れ、「どちらの生き方に従うか」と激しく迫ります。スキピオは最終的に、目先の快楽(幸福)ではなく、困難を伴う「国家への義務と美徳」を選択するのです。のちに犬猿の仲になったコロレド大司教への着任祝いのこの曲、とりあえずは、聴いてもらいましょうか。


 番外で、ビートルズ講座の方から一言。NASA設立50周年記念の2008年に、ビートルズの「Across the Universe」を地球外生命体へのメッセージとして光の速さ(電波)で北極星に向けて発信するプロジェクトが行われたそうです。ついでにビートルズも!

 
 
 

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