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5,私にとって世界とは何か、世界にとって私とは何か

 前回のテーマ「人間とは何か」に対して、実にさまざまなお声が登場しました。「人間は魂の一つの形式に過ぎない」と宇宙人が語っているとする著書『エイリアン・インタビュー』が紹介され、NHKの番組「人体第三集」のメッセージ「私たちはすべて45億年前に誕生したたった一つの命(いのち)から生まれてきた兄弟」とのご披露、「AIには心があるか」の疑問に対するユヴァル・ノア・ハラリの『NEXSUS-情報の人類史』(河出書房新社、柴田裕之訳)から、「知能と意識は別もの」(下巻「AI革命」p.20)との表現を引用して、「AIは、知能はあるが心はないのではないか」とのお答えの頂戴、「ビートルズが解散したあとにジョン・レノンが創ったイマジンには、オノ・ヨーコの背後霊を感じ、気持ちが悪くて仕方がない」との声、また、「蟻は生まれてすぐ餌探しに出かけ、女王蟻に給餌する。これは本能によるものでしょう。心の問題には本能とは何か、という問いが加わると思う」との声も。

 

 今回は「私」と世界との繋がりについて深堀することになるテキスト「第四章デルフォイ」(pp.69-85)に入ります。デルフォイのアポロンの神殿で、ソクラテスの友人のカイレポンが「ソクラテスよりも知恵のある者はいるでしょうか」とお伺いを立てます。巫女ピュティアは「誰もおりません。ソクラテスこそ、人類最高の賢者なのです」と答えます。こソクラテスは、神の意図を知るために、アテナイの知恵者と言われる人たちに対話を挑み、「私が何も知らないことを神は最高の智者だと告げたのだ」と、「無知の知」の境地を知ることになるのです(プラトン『ソクラテスの弁明』に登場)。


 「私」はソクラテスの言葉として知られる「汝自身を知れ」の意味を求めて、アポロンの神殿へと向かうのです。


 私は、東京・下北沢の2Kの小さな平家に住んでいました。つゆ草に戯れるイトトンボ、下水にうごめくイトミミズ、冷たい水を汲みだせる井戸…ある小雪の日、小さな庭と隣接した通路の街灯の光の背後にある暗闇を窓から感じたとき、「私」は見知らぬ外の世界との繋がりを感じて、不思議な気持ちになりました。

 

 世界は、編み目のように流れる時間の全体であり、ソクラテスも私も、その編み目を形づくる時間の節目なのだ。君がいなければ、私がいなければ、あの人がいなければ、時間は分裂して散在してしまう。君がいるから、世界は私つながっているのではないか。私がいるから、世界のすべてのひともまたつながっているのではないか。


 世界は、時間だけでなく、空間も含めた重層的に折り重なった時空連続体であり、「私」はその結節点の一つなのではないかー。私たちは因果の渦に巻き込まれて、知らないうちに世界の風景を変えていく。一杯のコーヒーを飲む、その小さな行動がカオスを演出するバタフライ効果となって緑豊かな穀倉地帯を砂漠化していくことにつながるのではないか…。

 

 人々の意識が凋落することによって陥る運命を、プラトンはアトランティス大陸の物語で伝えようとしています(田中美知太郎責任編集「クリティアス」中公バックス『世界の名著』7、pp.427-428)。ジュール・ヴェルヌが『海底二万里』(石川湧訳、岩波少年文庫)で海中の遺跡として描きだしたアトランティス(pp.137-143)は、いまでもロマンとして人々の心を掻き立てています。皆さん、ご自身と世界との関係について、思うところをどうぞ!

 
 
 

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