5,「人間50年…夢幻」「プラトンの夢」「胡蝶の夢」
- 5月26日
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「現(うつつ)の世界⇒整合性、現実感」「夢の世界⇒心の蓄積物が掘り出される。出会いたい自分が現れる」。白昼夢を見た体験談から「子供を取り合う母と義母のどちらに軍配をあげるかのソロモン王の判断は、大岡裁きと同じ」、さらに、AIも情報を重ね合わせる夢のような機能があるらしい、と、さまざまなお声をいただきました。私たちの稲作文化を「泥の文明」と位置づけ、その危うい状態を指摘している松本健一著『砂の文明、石の文明、泥の文明』(岩波書店)を「哲学の種」として、紹介もされました。
本日は、「桶狭間の戦い」の直前に、織田信長が舞った幸若舞『敦盛』の一節「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり」から入りましょう。信長自身の生涯が約50年(1534∼1582、49歳)だったこともあり、運命的な名台詞として知られています。「人間五十年」は、「にんげん(人間)」ではなく「じんかん(人の世、世間)」と読み、「人生は50年で終わる」ことを意味しているのではありません。「仏教の宇宙観では、下天(六欲天の最下層)の1日は人間界の50年に相当し、「人の世の50年など、天界の時間から見ればたった1日のはかないことを示す無常観を表しています。
フランスの啓蒙主義哲学者ヴォルテール(1694-1778)は、プラトンの『ティマイオス』に登場する混沌とした宇宙の素材からイデアを模した現実世界を形作る造物主デミウルゴスの話を、たくさんの”下っ端“を登場させた愉快な話に仕上げています(『哲学コント集成 上』植田祐次訳、国文社,pp.23-27)。その一人のデモゴルゴンが、泥のかけらで造り上げた地球について、仲間たちが皮肉を込め、次のように揶揄します。
「どうやらあなたは地球上に生物が数多く残ることを望んでおられないようですね。とくに最後に造っ人間に授けた理性はあまりにばかげていて、狂気に似すぎています。また、あなたは人間に、多くの敵とわずかな身を守る防御物を、たくさんの病気とほんのわずかな薬を、そしてたくさんの情念とほんのわずかな知恵しか与えていないからです」
デモゴルゴンは、顔を赤らめながら「批判することはたやすいことです。しかし、つねに理性をそなえ、自由でありながらその自由を悪用しない動物をいとも簡単に作れるとでもお考えですか」と、火星や、水星、金星、木星、土星で創造の手を加えたほかの下っ端造物主の手際のまずさを非難するのです。
お互いをやじり合う下っ端造物主たちに対し、デミウルゴスは「お前たちの造ったものは数億年しか持たないだろう。完全で不滅なものを作るのは私だけの特権だ」と言いのけます。弟子たちに、こんな話を語り終えたプラトンに対し、弟子の一人が彼に言います。「そして、あなたはお目覚めになりました」
信長よりも長生きだったプラトン(BC427∼BC347、74歳)やソクラテス(BC470∼BC399,71歳)の人生も、ヴォルテールからすれば「夢・幻に等しい」ようですね。こうした話を聞いて、夢の中の自分が現実か、現実の方が夢なのかという荘子の「胡蝶の夢」を思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さて、皆さんは信長、ヴォルテール、荘子それぞれの話をどのようにご自分の人生と重ねますか。
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