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2,夏目漱石の『夢十夜』を読む

  • 4月28日
  • 読了時間: 3分

「若いころに金縛りのような感覚に襲われ、歯がごっそりと抜け落ちる夢をたびたび見ました」「崖から真っ逆さまに落ちる夢を何度も見ました」「高校に行きたくない、そんな夢ばかり見た記憶があります」。「空港での乗継便に間に合いそうもなく、焦っている夢は定番でした」。こわい話だけでなく「意識すれば、夢の続きを次の日でも見ることができます」といった話もあり、前回も「夢」をめぐって楽しい発言で盛り上がりました。

 

夏目漱石の奇談『夢十夜』の話も出ましたね。1908年明治41年)7月25日から8月5日まで東京朝日新聞で連載されたこの作品は、書き出しに「こんな夢を見た」が印象的な第一夜、第二夜、第三夜に続いて、神代鎌倉・100年後と、10の不思議なの世界が次のように綴られています。


第一夜 こんな夢を見た。腕組をして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が…

死ぬ間際の女に「百年待っていて下さい」と自分は頼まれる。女の墓の横で待ち始めた自分は、赤い日が東から昇り、西へ沈むのを何度も見る。そのうちに女に騙されたのではないかと自分は疑い始める。その自分の前に、一輪の真白な百合が伸びてくる。いつの間にか百年が過ぎていた。…

第二夜 こんな夢を見た。和尚の室を退がって、廊下伝いに自分の部屋へ帰ると…「侍なのに無を悟れていない」と和尚に馬鹿にされた自分は、悟りを開いて和尚を斬るか、悟りを開けず切腹するかの二択を自らに課し、悟りを開くため無についてひたすら考える。

第三夜 こんな夢を見た。六つになる子供を負ってる。たしかに自分の子である。…

田圃道を子供をおぶって歩いている。子供は盲目である。あぜ道を行くうち、子供は周囲の状況を次々と当て始め、恐ろしくなった自分は子供を放り出して逃げることを考える。道はいつしか山道へと入り、やがて一本の杉の木の前に辿りついた。すると子供が「御前がおれを殺したのは今からちょうど百年前だね」と言う。殺人を自覚したとたん、背中の子供が急に石地蔵のように重くなった。…


 漱石が1915年1月13日~同2月13日に全39回にわたって連載したエッセー『硝子戸の中』をのぞいてみると、礎石が「夢のような」「夢幻(うつつ)」などと、自己の体験を夢にたとえる表現が垣間見えます。知人から子犬をもらった時のことを「何だか夢のような心持もする」と書き始め、ギリシア神話のアキレウスとヘクターの戦いから、漱石はその子犬にヘクターと名付け、近くの人の庭の池で死んでいるのが見つかり、「秋風の聞こえぬ土に埋めてやりぬ」という一句とともに裏庭に埋葬した話までを三話にわたって綴っています。豆腐屋の隣にあった寄席のことを思い出すたびに「奇異な感じに打たれながら、不思議そうな眼を見張って、遠い私の過去を振り返るのが常である」と書きだした話では「私は夢幻(うつつ)のようにまだ覚えている」と書いています。


 『夢十夜』は、実際に見たことではなくても、漱石の日常的な「夢幻」体質が反映されていると言えるかもしれませんね。まあ、とにかく読んでみましょう。

 
 
 

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