2,BL(ボーイズラブ)の世界
- 和行 茂木
- 10月8日
- 読了時間: 3分
宮本百合子の「ようか月の晩」をめぐって、前回もいろいろご教示いただきました。「とてもシュール」「金持ちの家に生まれた宮本百合子は、アメリカに留学しているとき、西欧の童話の世界に触れている。それが、欧風の白馬の王子のような登場人物を生み出したのではないか」
今回は、吉永小百合と檀ふみからペンネームをつけた女流漫画家よしながふみが題材です。まずは、同じ女流漫画家のやまだないとや直木賞受賞者の三浦しをんらとおしゃべりしまくっている対談集『あのひととここだけのおしゃべり』(太田出版)から。
「皆さんは青春時代、友達の誰かとひとしきり楽しく盛り上がってしゃべりまくった挙句、その日の夜、布団の中でそれを反芻して、後悔のあまり足をじたばたさせた事はありませんか? 私はあります。というか今でもそうです。あれやこれや、あっあの時きっと余計な事言った、ていうかなぜもっと早く自分から『帰るね』と言わなかったのか、ああきっと嫌われたに違いないと思ってじたばたする訳です」(まえがき)
「後で悔いるとわかっていながらよくもまあ、あんなにしゃべったもんだよ、私」(あとがき)。
彼女の描く漫画には、ゲイ(男性同性愛者)がよく登場します。BL(ボーイズラブ)と通称される分野の一人である彼女とのおしゃべりには、「少女の心を持ったゲイ」(やまだないと、p.23)「その人限定でレイプされるほど愛されたいってことなのよ」(マンガ好きの料理研究家、福田里香p.24)などと、凄い言葉が登場します。「少女マンガ」とボーイズラブについて、さらに彼女らのおしゃべりは次のように発展していきます。
「少女マンガってやはりマイノリティのためのものだと思う。女の子って、女性っていうだけで経済的にも権力の担い手としても腕力の世界でもマイノリティだから、社会のなかで。で、そういう人の、たたかって勝ち取って一番になるってことが基本的にできない人たちが読むマンガだと思っている」(よしなが、p.26)
「しおんさんが直木賞を受賞されたときに、授賞の言葉で『愛読書はBL』という言葉が出てきたのを見たときに、これは意識的に出してくれたと思ってうれしかったんです」
(よしなが、p.137)
「『BLというジャンルは特殊なもので、それを特殊な人たちが楽しんでいるだけだ』とBLをよく知らない人が思っているままでは、いつまで経ってもそこで表現しようとしてほかへ伝わっていかないと思うんですよ」(三浦しをん、同)
「BLもどれだけ売れても、マンガ史のなかではなかったことにされかねない。…なぜかというと評論家が読んでいないから。女性の評論家があまりいないこともあって、男性評論家が取り上げるものが評価の高いものになる。女の人の評論家が増えるべきなんです」
(よしなが、p.138) ……
さて、ゲイが登場する彼女の作品の一つ『きのう何食べた』(講談社)をまずは拝読し、本日の「おしゃべり」への入口といたしましょう。




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