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1,ニーチェの皮肉:ソクラテスは道化者?

 前回の講座「おしゃべりの思想」では、座談の形での「おしゃべり」で講座は大賑わいとなり、私自身が皆さんの「おしゃべり」からたくさんの贈り物をいただきました。改めて深く感謝申し上げます。開講にあたって、まずは以下にようにAIとのおしゃべりの可能性にまで踏み込んだ飯島さんのご高説「『しゃべり場』の思想を学んで」をご紹介いたします。


1,おしゃべりに参加している人達は何を考えているのか

2,おしゃべりの場が成立する条件はなにか

3,新しい他者であるAIとのおしゃべりはありうるだろうか

4,やっぱり人間同士のおしゃべりが大切ではないか


 内容は皆さんじっくり読んでいただきたいと思いますが、「5、最後に」で、表題「しゃべり場の思想」の副題として挙げている「自他の境界は、いかにして越えられるか」に触れて「他者との関係について改めて考えることができた。今いる友人が『真友』となるように、努めていこうと思っている」と書いています。


 日経新聞の文化欄に、音楽家の岡田暁生さんが、聴くだけでなく自分でもジャズをやる人たちが集まって即席で始める「ジャム・セッション」なる試みに参加した体験談について書いています(「緊張の日曜日」2025.12.14)。中にはプロもいるが、ほとんどがジャズ好きの素人演奏者が集まって、「せいの!」で始めるセッションだそうです。うまくやるコツを師匠格の人に聞いたところ、「延々と弾き続けない。そして共演者の音をよく聴く。お客様の気配に耳を傾ける。そして再び演奏を始める」との答え。それを聞いて岡田さんは、「これは実は人生の極意ではあるまいか」と次のように書いています。

 分だけ一方的にしゃべり続けない。言いたいことはクリア&シンプル手短に。そして一度黙る。周囲を聴く。それから続きを話始める。


 どうですか。これって、わたしたちの講座の在り方に参考になるのではありませんか。

ところで飯島さんが提起してくれた「自他の境界」をめぐる問題は、今回のテキストのタイトル「ソクラテスにとって、他者とは何であったか」とつながってゆきます。講座の内容について冒頭に触れたニーチェの言葉「ソクラテスは自分を真面目に相手にされるように世間に向けた道化者だった」(ニーチェ『偶像の黄昏』西尾幹二訳、白水Uブックス,pp.30-31)とは、どのような他者との関係が込められているのでしょうか。


 道化者を演じて、相手を油断させ、いつのまにか相手の価値観を転換させるのが産婆術でしたね。では、アリストテレスを始めとして、プラトン、クセノフォン、アリストファネス、さらにはアゴラでソクラテスの相手をさせられたアテナイ市民に至るまで、彼らはソクラテスのいわばこのひっかけ(術中)にはまっていたのでしょうか。それともソクラテスの妻クサンチッペのように、ソクラテスの方法論などとっくにお見通しで、逆に、ソクラテスを操っていたのでしょうか。


 それが本講座のテーマですが、今回はまずは飯島さんの小論を題材に、自由におしゃべりしていただきましょうか。さあ、一番乗りはどなたですか。

 
 
 

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