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10,究極の哲学エンタ 「ソクラテスの言語将棋」

 ソクラテスは、言葉を楽器のように演奏し、人々を「しびれさせる」ことを、プラトンの『饗宴』でアルキビアデスが語っていることを「8,哲学とは、言葉を楽器のように演奏することである」で紹介しました。今回は、ソクラテスがあたかも将棋を指すように、言葉によって対話相手を「善」なる状態へと一手一手追いつめる「言語将棋」を紹介することに致します。(「ソクラテスの『言語将棋』-『善』への王手筋を読む」(聖徳大学研究紀要 第12号 1-7、2001)


「ソクラテスは、問答を通してある種の言葉の『将棋』を指していたのではないか、と私は考えている。将棋におけるすべての指し手が、相手の王を『詰む』ために存在するように、ソクラテスの問答法は、対話相手を倫理的に『詰む』ことを目的とした方向性のある『言語運動』であった。『詰み』の状態は、対話者に己の『無知』を自覚せしめ、真理を自ら胚胎させる産婆の効果を持つ。しかし、これはまだ真の詰みではない。ソクラテスの本当の目的はあくまで『無知』の先におかれた『善』であり、ソクラテスは相手をその『善』へと追い込むために、さまざまな指し手を『言説(ロゴス)』によって打ったのである」(同p.1)


 アテナイに滞在中のソフィスト・ゴルギアスを相手に行った問答では、不正を受けるのと不正を与えるのとでは、どちらがより「望ましくないか」をテーマに、ソクラテスが議論を展開していきます。ソクラテスはまず、不正を与える側と、与えられる側のどちらが「惨めか」と問い、相手から「誰だって受ける方が惨めだと考える」と答えさせ、次に、不正を与える側と与えられる側ではどちらが「醜いか」と質問を変えて行きます。「醜い」と言われると、対話相手は「それは与える側だろう」と答えてしまいます。


 そこでソクラテスは、美しいものは善いもので、醜いものは悪いものだ、という美醜と善悪の「潜在的な常識感覚」を持ち出すことによって、「不正を受ける方が悪い」との当初の言い分の逆「不正を加えるほうが悪い」を導き出し、相手をやりこめるのです。

ソクラテスが、大衆が集まる広場で、このような形でアテナイの有名人たちをやりこめる様子は、若者たちに喝采を浴びました。若者たちは、この風景をまさに一種のエンタテインメントとして楽しんでいたのです。


 さて本日の最終日は、皆さんに時間を差し上げます。


 前回あげてくれたさまざまな哲学エンタ、たとえば「詩のボクシング」や「カラオケ・エンタ」、70年前の自分と出会う「タイムスリップ・エンタ」、宮崎アニメの世界と自分を重ねる「メディア・トリップエンタ」、新しい自分を見つける「未来自分作りエンタ」などを活用して、あなた方の考える「哲学のゴール」へ向けて、大衆(受講生方)を楽しませる話術を披露してください。


 ソクラテスは、「善への目覚め」をゴールとしていましたが、皆さんはまずご自分のゴールを設定してください。アリストテレスなら「驚かせることだ」、プラトンなら「究極の美を見せることだ」、ニーチェなら「破壊こそ哲学の種だ」と答えるかも知れません。


 何でも構いません。設定したご自分のゴールへ向けての話を構築してください。

 
 
 

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