1, 同じ時間に、二度入れない?
「時間への旅」などという大それたテーマを選んで、さて、さて、何から始めるか戸惑っています。第一回に予定として組んだテーマ「退屈だよ ハイデガーくん」など、難しすぎてどう取り組んでよいか、最初から困惑しています。まずは、1989年(平成元年)に発売された、美空ひばりの生前最後となったシングル曲、名歌「川の流れのように」から始めるのが妥当ではないか、と考えています。【美空云雀】川の流れのように / 川流不息 (中日歌词 live)
知らず知らず歩いて来た 細く長いこの道
振り返れば遥か遠く 故郷が見える
でこぼこ道や曲がりくねった道
地図さえない それもまた人生
ああ 川の流れのように ゆるやかに
いくつも時代は過ぎて
ああ川の流れのように とめどなく
空が黄昏に染まるだけ
生きることは旅すること
終わりのない この道
愛する人 そばに連れて 夢探しながら
雨に降られて ぬかるんだ道でも
いつかはまた 晴れる日が来るから
ああ 川の流れのように おだやかに
この身を まかせていたい
ああ 川の流れのように 移りゆく
季節 雪どけを待ちながら
作詞:秋元康、作曲:見岳章のこの名曲、どんな背景で作られたかご存じですか。この曲のモデルになった川は、何とアメリカ・ニューヨークにあるイースト川(イーストリバー)なのです。この曲を作詞した秋元康さんが、当時ニューヨークに住んでいたころにアパートの窓から眺めていた風景がモチーフになっているそうです。窓から見下ろすイースト川の流れからインスピレーションを受け、人生を川の流れに例えて作詞されたといいます。
古代ギリシアの哲学者ヘラクレイトス(~BC540~480)の有名な言葉「同じ川には二度入れない」を思い出します。川の水は絶えず流れ去るため、次に足を踏み入れているときには、すでに違う水が流れています。川だけでなく、入っている人間自身も時間とともに老い、変化しています。すべてのものは絶えず生成と消滅を繰り返しており、同じ瞬間は二度と訪れません。鎌倉時代の歌人・随筆家である鴨長明(かものちょうめい:1155~1216)の『方丈記(ほうじょうき)』の冒頭部分「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」の無常観とも通じますね。
川を「時間」と置き換えれば、「同じ時間には二度入れない」「時間の流れは絶えずして、しかももとの時にあらず」となるのでしょうが、実は、今回の試みの私的主題は「同じ時間に入りたい」という願望から出たものなのです。たとえば私は、小学校時代に校庭で観た映画:宮沢賢治の『風の又三郎』に風の音「どっどどどどうど、どどうど、どどう」とともに登場した不思議な妖精ともう一度会いたいのです。皆さんはどんな時間に入りたいですか。
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